今回の記事ではテニス通で「フラットハイボレー」と呼んでいる、フォアハンド側で、高めの打点から回転をかけずに打つボレー
について解説していきます。この打ち方に広く浸透している呼び方が無いため、独自に名前を付けました。
回転にエネルギーを使わない分、下回転のかかる打ち方よりもかなりスピードが出ます。上級者の間では、高い頻度で使われているのですが、テニススクール等では教わらないことも多いようで、重要性が高いにも関わらず認知度が低い打ち方になります。
通常テニススクールなどで「フォアハンドハイボレー」として習うのは、このような「下回転のかかる打ち方」のはずです。それに対してフラットハイボレーはこういった打ち方になります。
肩の回転でボールを打つという点は、下回転のかかる打ち方と同様ですが、肩を回す方向などが大きく異なります。フラットハイボレーではかなり右上の方から左下の方に手を振ります。
インパクト時のラケット面の向きは、「下回転のかかる打ち方」だと地面と平行より上向きなのが基本なのに対し、「フラットハイボレー」だと地面と平行より下向きになります。
構えた時の手の位置が「下回転のかかる打ち方」よりも後ろになります。
スイングを小さくしようという意識は必要なく、フォロースルーは、通常かなり左下の方まで行います。
フラットハイボレーは、肩の回転で打つショットですが、このような「ラケットを起こす動作」を使うことでより、
肩の回転を加速させ、ショットのスピードを上げることができます。
「ラケットを起こす動作」のやり方
まず、握力を抜いて、腕をリラックスさせておき、ラケットヘッドが横の方を向いている状態にします。ここで、ラケットを強く握ると手が自然と回転し、ラケットが起き上がります。
このラケットの起き上がる勢いを利用して、肩の回転のスピードを上げたいのですが、そのためには、手の回転が途中で止まる必要があります。
このように手が回りすぎてしまうと、肩の回転でボールを打つ事ができなくなってしまいます。
手の回転を止めるために必要なことは、「ヒジを伸ばし気味にしていること(完全に伸ばしきる必要はない)」 、「手首を手の甲側に曲げていること」、「肩に力を入れていること」の3点です。
インパクトする前に「ラケットを起こす動作」を使いスイングスピードを上げます。
「ラケットを起こす動作」中にボールを打つのではなく、動作が終わった後にインパクトします。
スマッシュ等との使い分け
最後に「スマッシュ」と「下回転のかかる打ち方」の2つとの違いと使い分けについて解説していきます。
スピードは、スマッシュ、フラットハイボレー、下回転のかかる打ち方の順で速いです。
逆に、安定性の高さは、下回転のかかる打ち方、フラットハイボレー、スマッシュの順になります。
スマッシュとフラットハイボレーの安定性の違いは、何の回転を使ってボールを打っているかの違いによって生まれています。フラットハイボレーで最終的に速くしているのは、肩の回転なのに対して、スマッシュでは手の回転です。
肩の回転の方が回転の半径が大きくなる分、フラットハイボレーの方が、インパクト前後でのラケット面の向きの変化が小さく、
安定性が高くなります。
これらの使い分けの仕方は、大雑把に言えば、ミスをしなさそうであれば、スピードの出る打ち方を優先的に使い、ミスをしそうであれば、より安定性の高い打ち方を選ぶということになります。
もう少し具体的に言うと、
まず、下回転のかかる打ち方とフラットハイボレーのどちらを使うかを選ぶ主な基準は、打てる高さとネットからの距離になります。
フラットハイボレーは軌道がかなり直線的になりますので、直線で入らなそうな打点から打つ場合は、スピードを落として曲線的な軌道を作ることがしやすい下回転のかかる打ち方を使用します。
フラットハイボレーとスマッシュに関しては、どちらも高い打点から打つので、打点は、あまり使い分けに関係ありません。重要なのは、相手からのボールの速さと、自分が前進していく速度になります。
ラケット面の変化が大きいスマッシュは少し打点がズレただけでミスをしやすくなります。そして、速いボールを打ち返す時や、自分が前に速く動いている時などは、打点が狂いやすいので、スマッシュではなく、フラットハイボレーを使う必要があります。
「グリゴール・ディミトロフ選手のフラットハイボレー」
ブリスベン国際公式チャンネル 2014年男子ダブルス2回戦 ディミトロフ&シャルディ対フェデラー&マユ戦より (1:19:05~)
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「アンディ・マレー選手のフラットハイボレー」
オーストラリアンオープン公式チャンネル 2016年男子シングルス決勝 マレー対ジョコビッチ戦より (2:55:34~)
今回の重要ポイント
○フラットハイボレーは、下回転のかかる打ち方(通常のハイボレー)よりかなりスピードを出せる。
○右上の方から左下の方に手を振る。
○インパクト時のラケット面の向きは地面と平行より下向き。
○構えた時の手の位置が「下回転のかかる打ち方」と比較して後ろになる。
○「ラケットを起こす動作」を使いショットの威力を上げることができる。
○フラットハイボレーの下回転のかかる打ち方のどちらを使うかは、主に打てる高さとネットからの距離で決める。
○フラットハイボレーとスマッシュのどちらを使うかは主に相手のボールの速さと、自分が前進していく速度で決める。