ドロップショットの基礎 種類や使う場面の解説





今回はドロップの基礎、種類、使う場面などについて解説していきます。

ダブルスでは、ネット付近に一人は相手がいる事が多いので、ドロップを打つ機会が少なく、ドロップが使われるのは主にシングルスになります。

ドロップショットは、下回転をかけるショットで、打ち方は、スライスとほぼ同じで、狙う位置や、スイングスピード等を変えただけと言えます。


ドロップには大きく分けて「浅くするドロップ」、「角度をつけるドロップ」の2種類あるのですが、この2つが混合されて解説されてしまっていることが多く、誤解を生む原因となってしまっています。

まずは、これらの違いについて解説していきます。


 

浅くするドロップ

「浅くするドロップ」では、なるべく浅い位置で2バウンド目になるように、速度が遅くなるように打ちます。

減速させるために、一度打ち上げる(地面と平行よりも上に打つ)のが特徴で、低めのスライスロブを打つような感覚になります。山なりの軌道の頂点がネットよりもかなり手前に来るようにするのが打つためのポイントです。

バウンド時にボールを減速させるため、下回転をある程度多くかけます(特に後ろの方から打つ場合)。バウンド時に横に大きく曲がるドロップショットは、このタイプのドロップの応用で、下回転に加えてジャイロ回転もかけた打ち方になります。

最短距離でネットまで届くストレートに打つのが基本になります。

一度打ち上げる必要があるため、高い打点だと少々打ちにくく、ある程度低めの打点で使われる事が多いです。

ドロップと言うとこちらのタイプのイメージの方が強いかと思いますが、こちらの方が使われる頻度が低いです。


「ロジャー・フェデラー選手の浅くするドロップ」(925:36~)
オーストラリアンオープン公式チャンネル ロジャー・フェデラー対ルー・イェンスン戦より
*埋め込み設定により動画の開始時間と終了時間を設定し、動画の一部のみを見れるようにしているため、「もう一回見る」のボタンを押すと、設定した開始位置からではなく、最初から動画が始まってしまいます。設定した箇所を繰り返し見る時は、「再生バーで開始時間をクリックする」、「パソコンの「←」ボタンを使って5秒巻き戻す」、「このページ自体を再読み込みする」といった方法をご利用ください。

 

 

 

 

 

角度をつけるドロップ

「角度をつけるドロップ」の方がプロが使う事が多いタイプになります。角度をつければ、そのまま進んでいっても、横方向に相手を走らせることができるため、「浅くするドロップ」ほど、遅くしようとする必要はありません

角度をつたいので、当然ながら、ストレートではなく、クロス、逆クロスを狙います。

「浅くするドロップ」のように一度打ち上げるより必要は無く、やや直線的な軌道になります。こちらも下回転をかけて打つものの、あまり回転量を多くしようとする必要はありません。

角度をつけて打つスライスを、速度を下げることによって、さらに角度をつけれるようにしたイメージです。スライスが打てるのなら、あとは丁度いいスイングスピード(力加減)を覚えるだけで打てるので、こちらの方が簡単に習得できるはずです。


「錦織圭選手の角度をつけるドロップショット」(7:45:58~)
オーストラリアンオープン公式チャンネル 2015年 錦織圭対スティーブ・ジョンソン戦より




強打と見せかけてドロップが有効

ドロップはトップスピンの強打を打てる場面で、強打を打つと見せかけたフェイントを行った後に使う事が多いです。

強打を打たれると思うと、ポジションを後ろに下げて、それに備えるのがセオリーです。相手が後ろに下がり、こちらがが打つ前に左右どちらかに賭けて、先に走り出し、その左右二択の賭けに成功した場合、かなり良いコースに強打できても、取られてしまう可能性が高くなります。

しかし、強打と見せかけてのドロップも打つようにすると、相手にとっては、左右に加えて「前」という3つ目の選択肢が加わる事になります。左右だけならば、後ろの方に立っておいて、左右二択の賭けに成功すれば、まだ返せる可能性が高いのですが、後ろに立つほどドロップを取るのが大変になってしまうので、ドロップもあると相手は対応が難しくなります。


強打と見せかけてのドロップは、シングルスでは非常に重要ですが、デメリットもあります。

強打をした場合は、相手が左右どちらかに先に勘で動いて、それが当たって取れたとしても、まだこちらに有利な状況が続く可能性が高いですが、ドロップを読まれるとカウンターを受け、逆に得点されてしまう可能性が高くなります。

ドロップは、相手が余裕で追いつけてしまったら、浅い位置から打てる単なるチャンスボールです。そして、相手が、ドロップを読んで、こちらが打つより先に前に動き出すと、簡単に追いつける可能性が高くなります。ですので、ドロップを打つ際は、相手に読まれない事が非常に重要になります。

 

 

フェイントのコツ

フォームでバレないようにするための、フェイントのコツは、他のショット(特にトップスピンの強打)が打てる構えをギリギリまでしておいて、直前にドロップに変える事です。握り方もギリギリまでトップスピンの握りのままにしておくのが基本です。

ドロップをするときのグリップは、コンチネンタルが基本で、トップスピンを打つ時とは、握り方が違うので、ドロップを打つ寸前に握り変える必要があります。

この時、左手がラケットのスロート部分に添えてあると、左手でラケットを持ちながらコンチネンタルに変えられるので、グリップチェンジが簡単にできます。

普段は左手を添えず、ドロップを打つ時だけ添えてしまうと、ドロップを打とうとしているのがバレバレになってしまいますので、普段のストロークの時からギリギリまで左手を添えておくクセを付けておくことが必要です。

 

 

相手に読ませないためには、使う場面、頻度にも気を付ける

相手に読ませないためには、フォームの他に使う場面にも注意が必要です。

「こういう場面ではドロップをほぼ毎回使う」と相手に気づかれると、フォームでバレなくてもドロップを読まれるようになります。他の技術に自信が無く、「ドロップしか使えない」という場面があるようだと危険です。

例えば、「バックのトップスピンに自信がなくて、浅くて低めのチャンスボールは、ほぼドロップで打ってしまう」といったことがあると、相手は、その場面では、ドロップを警戒するようになります。ドロップに頼りすぎず、しっかり他の技術も磨いていく必要があります。


また、使う頻度が多すぎると、相手は常にドロップが来るかどうか注意を払うようになり、ドロップの効果が下がってしまいます。

「強打と見せかけてドロップ」の割合も、多くても3割くらいを限度にすべきです。あまりにもドロップの割合が多いと相手は一か八かで、こちらが打つ前にネットに詰めてくるようになります。そして、相手がその賭けに成功した場合、高確率でこちらのピンチを招いてしまいます。



次からの記事2つでは、「浅くする」ドロップ、「角度をつける」ドロップを実際にプロがどうやって打っているのかを動画で紹介していきます。




今回の重要ポイント

○ドロップには、「浅くするドロップ」、「角度をつけるドロップ」の2種類がある。

○「浅くする」タイプでは、一度打ち上げるように打つ事で速度を減速させる。軌道の頂点がネットよりもかなり手前になる。下回転をある程度多くかける。ストレートに打つのが基本。

○「角度をつける」タイプは、「浅くする」タイプよりは、速度があり、直線的な軌道になる。

○ドロップは、強打と見せかけたフェイントの後に打つのが有効。

○ドロップは、余裕を持って追いつかれると単なるチャンスボールになってしまうため、相手にドロップが来ると事前に読まれない事が非常に重要。

○フォームでバレないためには、ギリギリまで、他のショットを打てる構えをキープする。グリップチェンジがスムーズにできるよう普段のストロークの時からギリギリまで左手を添えておく。

○読まれないためには、フォームの他に、使う場面と頻度にも注意が必要。