今回の動画では、ジャイロ回転の性質、メリット、デメリットなどについて解説していきます。
ジャイロ回転とは、簡単に言えばボールの進行方向に対して時計回りか反時計回りをする回転のことです。コークスクリュー回転と呼ばれることもあります。
テニス界では、ジャイロ回転の認知度が何故か低く、テニスでは、ジャイロ回転のボールを打つことはできないと考えている方も多いと思います。
たしかに、100%純粋なジャイロ回転のショットを打つことはまずできませんが、縦回転や横回転が混じっているジャイロ回転であれば、普通に打つことが可能です。(縦回転や横回転の場合も100%純粋ということはまずありません。)
ジャイロ回転を使ったショットの代表的な例は、バウンド時に横に曲がるドロップショット、ツイストサーブ、ラットショットの3つです。
ツイストサーブとは、右利きの場合、サーバー側から見て、バウンド時に右に曲がるサーブのことで、ラットショットとは、バウンド時に右に曲がるトップスピンのストロークです。(これらの用語は定義があいあまいで他では違う意味で使われている場合があります。)
ジャイロ回転の定義
それでは、ここからジャイロ回転の定義についてより詳しく解説していきます。
テニス通では、バウンド時にボールの進行方向を左右に曲げる効果のある回転のことをジャイロ回転と呼んでいます。
ジャイロ回転の定義は厳密に定まっておらずブレがあるため、他では違う意味で使っている場合がありますが、少なくてもテニスにおいてはこれ以外の定義にするメリットはないかと思います。
ジャイロ回転とは、ボールの進行方向に対して時計回り、反時計回りと最初に言いましたが、ここで考慮する進行方向とは、左右(地面と平行の方向)だけであり、
上下(地面と垂直の方向)に関しては考慮しません。上下に関しては、進行方向がどんな向きでも常に回転軸が地面と平行になります。
ここで、ジャイロ回転の方向が時計回り、反時計回りなのは、ボールの進行方向に対して(左図)であり、ネットや、ラインの方向に対して(右図)ではない点に注意が必要です。
例えばこのように、ボールをネットに対して斜め45度に打つとすると、純粋なジャイロ回転の向きも45度ズレることになります。
ネットに対していつも同じ回転方向という訳ではありません。
ジャイロ回転によるバウンド時、空中での変化
テニス通の調べた限りでは、ジャイロ回転の空中での影響について、テニスボールの場合、どんな変化が起こるのか、しっかりと実験で検証された例がないようですが、経験的に空中での変化は、ほとんどないものだと推測されます。
バウンド時にはボールの進行方向に対してボールを横に曲げる効果があります。時計回りだと右、反時計回りだと左にそれぞれ軌道を変化させます。
特殊なことが起きているように感じられるかもしれませんが、ボールの進行方向に対する力の向きが違うだけで、本質的には、トップスピンや下回転のバウンド時の効果と同じものになります。
ボールの回転には、回転によりボールの上部が動いていく方向にバウンド時に力を加える効果があります。
トップスピンの場合は力の向きが進行方向と同じなので、ボールが加速、下回転の場合は進行方向と逆なので減速、ジャイロ回転の場合は、進行方向と90度ずれているために、横に曲がることになります。
なお、ジャイロ回転は「バウンドの瞬間」に軌道を横に曲げますが、横回転は「空中で」軌道を横に曲げます。
同じ「ボールを横に曲げる効果がある」という共通点があるためか、ジャイロ回転は横回転とよく混同されていますが、この2つの回転では、回転の方向が全く違いますので、しっかりと区別するようにしてください。
ボールの進行方向に対して横方向に動く回転が横回転になります。
下回転+ジャイロ回転の打ち方の原理
下回転にジャイロ回転を加えて打つ主なショットは、バウンド時に横に曲がるドロップショットになります。
下回転にジャイロ回転を加えることは、横回転を加えるのと同じようなイメージでできるので、比較的簡単です。
バックハンドスライスでは、単純にボールの表面を(打ちたい方向に対して)左から右にこするようなイメージでスイングするだけで、横回転をかけられます。
インパクト時のラケット面をもっと上向きにして同じことをするだけでジャイロ回転をかけられます。
ラケット面が上を向いていくほどジャイロ回転が多くなり、横回転が少なくなります。
逆にラケット面が地面と垂直に近くなるほどジャイロ回転が少なくなり、横回転が多くなります。
ラケット面を上向きにすると当然ショットの軌道は高くなります。例えば、軌道の高いスライスロブを打つ時に、左から右にこすって回転をかけるとジャイロ回転が多くかかり「バウンド時」に左に曲がります。(実戦はほとんど使われません)
逆に、低い軌道のバックハンドスライスを打つ際に左から右にボールをこすると、横回転が多くかかり、「空中で」左に曲がります。
バウンド時に横に曲がるドロップを打ちたい場合は、インパクト時にラケット面を上の方へ向け、一度打ち上げるように打つことが必要になります。
トップスピン+ジャイロ回転の打ち方の原理
トップスピンにジャイロ回転を加えて打つ主なショットは、ツイストサーブとラットショットになります。
これらのショットは、通常、インパクト時のラケット面が地面と垂直に近いため、さきほどのようにラケット面を地面と水平に近くしてボールを左右にこすることによりジャイロ回転をかけることはできません。
また、すでに述べたように、純粋なジャイロ回転の方向は、コートに対してではなくボールの進行方向に対して変わってくるので、ボールを打つ方向を左右に変えてボールを下から上にこすっても進行方向の変わったトップスピンになるだけで、ジャイロ回転にはなりません。
ですので、ボールの表面をこするというイメージでは、トップスピンのショットにジャイロ回転を加えることはできないということになります。
では、どういう原理でトップスピンのショットにジャイロ回転を加えることができるのかというと、少なくともテニス通の調べた限りでは、科学的に納得のいく説明は見つからず、その詳細はまだ分かっていないようです。
ただ、どのように打てば、ジャイロ回転のかかったショットを打てるのかは、経験的に分かっており、ツイストサーブやラットショットの打ち方は、すでに別の動画で紹介しています。動画の概要欄にリンクが貼ってありますので、ぜひこれらの動画もご覧ください。
ジャイロ回転のメリット
1.相手から離れていく方向に曲がるジャイロ回転をかければ、相手をより走らせる事ができます。
2.相手の苦手なサイド(基本的にはバックサイド)に曲げることで、そちらで打たせやすくなります。
3.空中では変化が現れずバウンドの瞬間に軌道が変化するので、どの程度変化するのかバウンドの瞬間まで分かりにくく、相手は打ち返しにくくなります。
ただし、フォームなどから回転量を推測することは可能なため絶対に変化が予測できないという訳ではありませんし、バウンドしてから打ち返すまでの時間が長いと相手は変化に対応しやすくなりますので、ショットの速度が遅かったり、バウンド地点から相手までの距離が長かったりすると相手が打ちにくく感じる効果は薄くなります。
ジャイロ回転のデメリット
1.相手の移動距離が減ってしまうこともある
相手に近づいていく変化をする回転をかけると、当然相手の移動距離が減ってしまいます。
これで相手が打ちにくくなるようなら、それでも使う価値は十分にありますが、そうでなければ、相手の取りやすいように曲げてあげている形になってしまうので注意が必要です。
2.ジャイロ回転に限らず、他の回転でも言える事ですが、回転量を増やすほど、ショットのスピードや他の方向への回転量が減ることになります。
メリットとデメリットを総合的に判断すると
打点によりバウンド時に曲げられる方向は左右どちらかに決まっており、相手に近づく回転は基本的にあまり有効ではありませんので汎用性は低くなります。
また、トッププロレベルでもジャイロ回転のかかったショットはあまり使わない選手もいますし、習得の優先順位は低いと言えます。
ただ、使う人が少ない分、ジャイロ回転の変化に慣れていない相手も多く、そのような相手には効果的になります。
色々なショットを習得してみたいという方は、中上級レベルくらいからジャイロ回転を使ったショットを練習してみるのも良いかと思います。