サーブでは、主に足→上半身(胴体)→腕→手首(プロネーション)という順番で運動が連鎖していきます。この記事では、その中の足から上半身への運動連鎖の部分を解説していきます。
足の筋肉量は腕よりもはるかに多く、足の力を活かせるようになると、一気にサーブを速くする事ができるようになります。しかしながら、足の力を活かす方法は、抽象的に解説されることがほとんどで、イマイチよく分からないという方が多いのでは無いでしょうか。
この記事では、足の力を活かす方法をしっかりと「具体的」に解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
ただし、上半身から手首までの運動連鎖がある程度上手くできるようになっていないと、せっかく足の力を上半身に伝えても、ボールまでは伝わりませんので、上半身からの運動連鎖がある程度できるようになってから、足の力を使う練習を始める事をおススメします。
「足の力を活かし、サーブの威力を上げる」解説動画
足から上半身に力を伝えるには、地面を蹴り始める直前に、地面を蹴るだけで上半身が回転する姿勢をあらかじめ取っておく必要があります。足の力で上半身の回転速度を上げると、上半身が腕を前に引っ張る力が強くなり、結果としてサーブの威力も上がります。
ヒザを伸ばしている途中や、伸ばし終わった後に何かをする事で足の力を活かせると考えている方が多いと思いますが、実際には、そうではなく、この姿勢が取れていないと、どれだけ頑張ってひざを伸ばしてもスイングスピードを上げる効果は、ゼロになってしまいます。
逆に、上半身に回転を起こす事ができる体勢をあらかじめ取っていれば、ひざを伸ばすだけで自然と上半身に力を伝える事ができます。
足の力による上半身の回転には、大きく分けて「横方向」と「縦方向」の2種類あり、それぞれポイントとなることが違うので、この2つを分けて解説していきます。
上半身の横方向の回転を起こす姿勢のポイント
まず、上半身を横に回転させる姿勢のポイントを説明します。重要なのは、左足のつま先と上半身の向きの差です。左足が前の方を向いていて、上半身が後ろの方を向いている事が必要になります。
また、前にある左足の方に体重を乗せておく事も必要です。
この状態で足を伸ばせば自然と後ろの方を向いていた体が前の方を向いていく、「上半身の横方向の回転」が起きます。
上半身の縦方向の回転を起こす姿勢のポイント
次に、上半身を縦に回転させる姿勢のポイントを説明します。上半身を縦に回転させるためには、体を「くの字(弓なりとも言います)」にする必要があります。
体をくの字にした状態で足を伸ばすと、上半身が勝手に前に起き上がります(上半身が縦方向に回転する)。これは、サッカーのスローインと同じような原理です。
下記のイラストは、プロがジャンプの直前に取っている体勢の1例を示したものです。体がくの字に曲がっているのが分かると思います。

体をくの字にするためには、コシ、もしくは、ヒザを前に突き出すようにしてください。トッププロの間でもコシを出す選手と膝を出す選手の両方がいますので、どちらを選択しても問題ありません。例えば、ラファエル・ナダル選手はコシを前に出すタイプで、ノバク・ジョコビッチ選手やロジャー・フェデラーはヒザを前に出すタイプです。
頭の位置は、ヒザやコシと一緒に前の方に行くのではなく、両足の中央の上あたりにくるようにします。意識の上ではそれよりももっと後ろに頭をもってくるつもりでいた方が、丁度いい位置になりやすいです。
なお、上のイラストでは体が「横から見てくの字」ですが、下のイラストのように、「後ろから見てくの字(上半身が左に傾き、ヒザが右に突き出る)」の選手も多いです。

しかし、「後ろから見てくの字」の姿勢を取っても、サーブの威力を上げる効果は、低いと思われます。現時点(2019年2月)で最強のサーバーであるイボ・カルロビッチ選手もあまり上半身を左に傾けていませんし、その他色々な選手のサーブ姿勢を見ませしたが、「後ろから見てくの字」とサーブの速度との相関性は、ほとんど見られませんでした。
ただし、この姿勢を取ることで、スピンサーブが打ちやすくなりますし、ツイストサーブ(バウンド時に右に曲がるサーブ)を打つにはこの姿勢がほぼ必須になります。
この体勢は、体への負担も大きめですので、スピンサーブ、ツイストサーブを使わない方であれば、無理してやる必要はないかと思います。
地面を蹴る直前の姿勢が重要
重要なのは地面を蹴り始める「直前」の姿勢です。
一度足の力が伝わる体勢を取れていても、足の力が伝わる前に、その体勢が崩れてしまっては、最初からできていないのと変わらなくなってしまうのでご注意ください。地面を蹴るより先に上半身が前を向いてしまったり、頭の位置が前の方に行ってしまい「くの字」の姿勢が崩れると足の力を活かせなくなってしまいますのでご注意ください
足から上半身に直接、運動連鎖が起きる
なお、足からの運動連鎖は、足から腰にエネルギーを伝え、その後で、腰から上半身にエネルギーを伝えると解説されることが多いのですが、それだと、先に腰が大きく回転して、その後を追うように上半身が回転するイメージを持ってしまうと思います。
しかし、足の力を使った時に、実際には、そのような動きは起きません。上半身が先に大きく回転し、後から腰がついてくる形になります。そのため、当サイトでは、足→腰→上半身ではなく、足から上半身に直接、運動連鎖が起きると解説しています。
足の力を活かしたサーブを習得するには時間がかかる
足から上半身への運動連鎖自体は、原理が分かってしまえば、そこまで難しくないと思います。しかし、足の曲げ伸ばしにより、頭の位置と向きが変化していくことになりますので、ボールとの距離感が常に変化することになりますし、前後左右の感覚も分かりにくくなります。
また、今まで地面に足が着いていたことで、動きがある程度制限されていたのですが、ジャンプするようになる事で、動きの自由度が高くなり、制御するのがより難しくなります。
総合的に考えると、足の力を活かしてサーブを上手く打つための難易度はかなり高く、相当な練習が必要になります。
中々上手くいなかったとしても焦らず練習を重ね、足を活かしたサーブを習得して頂ければと思います。
今回の重要ポイント
〇足の力が活かせると一気にサーブを速くする事ができる。
〇ジャンプの直前に上半身が回転する体勢を取っていれば、ひざを伸ばすだけで自然と上半身にエネルギーが伝わる。
〇上半身の回転は大きく分けて「横の回転」(上半身が前を向く)と「縦の回転」(上半身が起き上がる)の2種類。
〇左足のつま先が前の方を向いていて、上半身が後ろの方を向き、左足に体重が乗った状態で、地面を蹴ることで勝手に「上半身の横の回転が」起きる。
〇体を前後に「くの字」に曲げた状態でヒザを伸ばすことで「上半身の縦の回転」が起きる。「くの字」にするためには、コシかヒザを前に入れ、頭は後ろの方に保つようにする。