威力のあるバックハンドスライス 滑るスライスの打ち方





今回の記事は、前回の「バックハンドスライス基礎」からの続きになりますので、まずはこちらの記事を先に読まれることをおススメします。今回は、ある程度しっかりとスライスを打てるようになった方が、スライスの威力を上げていくにはどうすればいいかについて解説していきます。



スライスが上達してきたら「回転量は抑えて、出来る限りスピードを求めるように」と言われる事がよくあるのですが、これは、明らかに間違いです。

下回転には、ボールが下に落ちるのを抑え、軌道を直線的にする効果がありますので、スピードを出すほど、ボールをコート内に入れるのが難しくなります。同じ速度であれば、フラットよりも軌道が直線的ですので、低い打点でスピードを上げすぎれば、コートに入れるのが不可能になります。

ですので、基本的には、スピードはコート内に安定して収められる程度に抑えて、回転量を増やしていくのが目標になります。

前回の記事でも書きましたが、スライスの基礎は腕を肩を中心として一方向に回している動きです。回転量を増やしていくには、この腕の回転方向を下向きにしていき、スイングの上から下への動きを大きくする必要があります。


「グリゴール・ディミトロフ選手の回転量の多いバックハンドスライス」(2:13:27~2:13:51)
オーストラリアンオープン公式チャンネル 2015年 ディミトロフ対バグダティス戦より
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回転量・威力のあるスライスの打ち方

構えの段階で、「肩を入れる」と表現される動きを行います。腕を先行させて体を捻るイメージです。(文章だと分かりにくいので、後で動画を上げて説明させて頂く予定です。)

やや体を前傾させます。右足の上に右肩が来るくらいが目安になります

回転量を多くできるよう、上から下への動きを大きくしたスイングをします。

初心者の方には、「体は横向きをキープする」ことをおススメしていますが、レベルが上がってきたら横向きをキープする必要はありません。ただし、体は腕に引っ張られる形で回っていく必要があります。腕と同時や腕よりも前に体が回らないように注意し、必ず腕が体よりも先行するようにしてください。

打った後にすぐスイングを終えるのではなく、大きめにフォロースルーを取るようにしてください。


 

滑るスライスとは 滑るスライスの打ち方

良いスライスは「滑るスライス」だとよく言われます。しかし、何が「滑るスライス」かという定義はしっかりと決まっていないですし、「滑る」というのは個人の感覚による所が大きいので、科学的に「これが滑るスライスの正体」だと断定することは難しいです。

ただ、一般的には、「低くて速い(あまり減速しない)スライス」が「滑るスライス」と呼ばれているかと思いますので、ここでは、どうすれば、「低くて速いスライス」を打てるかについて解説させて頂きます。

まずは、やはり回転量が多い事が重要です。下回転が多いと弾道が低くなりますし、減速しにくくなりますので、回転量の多さは、速さの面でも低さの面でも重要になります。

球速が速いほど、「滑るスライス」になると考えられますが、今回の記事の最初の方で書いたように、速ければ速いほど、コート内に収めるのは難しくなり、ミスが増えます。

また、低さの面では基本的には、ネットを通る時の高さが低いほど、また落下地点が深いほど、バウンド後の軌道は低くなりやすいです。(100%そうなる訳ではありません。)しかし、ネットぎりぎりの低いところや、ベースラインぎりぎり深いところを狙えば、当然ミスが増えてしまいます。

入ればほぼ得点できるような攻撃力のあるショットであれば、多少ミスが増えてでも使う価値がありますが、スライスは、いくら威力が増してもウィナーを量産できるような武器にはなりません

相手が威力のあるスライスに慣れていなければ、それだけでミスを連発してくれることもありますが、上級者相手では、それはまずあり得ないです。

「滑るスライス」を目指すにしても、速さや狙う場所は、ミスがかなり少なくて済む程度に抑える必要があります。





今回の重要ポイント

○スピードではなく回転量を上げていくようにする。

○腕の回転方向を下向きに近くしていき、スイングの上から下への動きを大きくすることで、回転量を上げる。

○腕を先行させて体を捻る(肩を入れる)。体を前傾させる。

○インパクト時には上半身は、ほぼ真横を向いた状態にするが、打ち終わった後は、回転させる。上半身と腰が同時に回らないようにする。

○大きめにフォロースルーを取る。

○「滑るスライス」を打つには、まず回転量を上げる事が重要。

○スライスは攻撃力のあるショットではないため、「滑るスライス」を目指すにしても、速さや狙う場所は、ミスが少なくて済む程度で調整する必要がある。