サイドスピン(横回転)の特徴 メリット・デメリット





「サイドスピンの特徴」解説動画



今回の動画では、横回転（サイドスピン）の特徴、メリット、デメリットについて解説していきます。
横回転とはボールの進行方向に対して横方向に動く回転のことです。

空中で横に曲がるスライスショット、スライスサーブ、バナナショット（空中で左に曲がるトップスピンストローク）などが横回転をかけたショットになります。


空中、バウンド時の変化

空中では、軌道を横に曲げる効果があります。右回りの回転だと左方向へ、左回りだと右方向へ軌道を変化させます。 この変化は、ベルヌーイの定理、マグヌス効果によるものです。

例えば、右利きのスライスサーブの場合だと、右回りにボールが回転するため、空中で左に曲がることになります。


なお、「ボールを横に曲げる効果がある」という共通点があるためか、横回転は、ジャイロ回転とよく混同されていますが、これらの回転では、回転の方向が全く違いますので、しっかりと区別する必要があります。ジャイロ回転とは、ボールの進行方向に対して、時計回り、もしくは反時計回りの回転のことです。


横回転は「空中」で軌道を横に曲げるのに対してジャイロ回転は「バウンドの瞬間」に軌道を横に曲げます。横回転には、バウンドの瞬間に軌道を曲げる効果はありません。


ですので、バウンドの瞬間に横に曲がるドロップショット、ストロークなどはジャイロ回転によるものであって、横回転によるものではありません。

科学的に見れば、同じ横回転なのに、空中で曲がる時とバウンド時に曲がる時の両方があるという事はあり得ず、横回転をかけてもこれらのショットを打つ事は不可能です。


回転にエネルギーを使い、球速が遅くなり、重力による影響を受ける時間が長くなるため、間接的に軌道を下方向に曲げる効果もあります。



横回転のメリット

１．相手から離れる方向へ軌道を変化させれば、相手の動く距離をより長くできます。

２．相手の苦手なサイドに曲げることで、そちらで打たせやすくなります。

３．相手にとっては、軌道が横に曲がる分、適切な位置に立って準備することがしにくくなるため、ミスや甘い球を引き出す効果があります。

体に近づいていく変化、遠ざかる変化のどちらにもこのような効果がありますが、近づいていく変化の方が直前にボールとの距離を調整できる範囲が狭く、甘い返球を誘う効果が大きいです。
ただし、回転量に加えて球速もないとあまり効果はありませんので、スライスサーブを打つ時以外は、そこまでこの効果は高くありません。また、相手がその変化に慣れてしまえば、効果は薄くなります。


４．フラットなショットよりもミスを減らす効果があります。
ただし、トップスピンのように速度を維持しつつミスを減らせる直接的な効果は少なく、下回転のように速度を下げることにより間接的にミスを減らせるというのが主な効果になります。


５．相手が前に詰めてきて、ストレートのコースで相手の横を抜こうとする際に、横回転のかかっていない直線的な軌道のショットよりも相手から離れた所を通せます。そのためより有効なパッシングショットを打つ事が可能です。


６．横回転のかかったショットは、打ち返す時に、ショットの軌道を横方向に変化させる効果があります。空中で曲がる方向と逆の方へ打球方向を変化させます。

通常はインパクト時のラケット面の向いている方向がボールが最初に飛んでいく方向と大体同じになりますが、これが横にズレることになります。

相手は、この変化を考慮して打ち返す必要があるため、返球時の左右のコントロールが難しくなります。

少し横回転をかけた程度では、ほとんど体感できないような小さな変化しかおきず効果は薄いですが、スライスサーブで大量の横回転をかけた時には、この変化が顕著になり、相手はかなり打ちにくくなります。
相手がこの変化に慣れていない場合は、ミスや甘い返球をしてくれることも非常に多くなります。

なお、正確に言うと、この効果は、ラケット面に対して横向きの回転の影響になります。ラケット面が地面と平行を向いていれば、これは、横回転と同じになりますが、ラケット面が上下にズレるとその分、横回転とはズレることになります。


横回転のデメリット

１．相手に近づいていく変化をする横回転をかけると、当然ながら相手の移動距離が減ってしまいます。これで相手が打ちにくくなるようなら、それでも使う価値は十分にありますが、そうでなければ、相手の取りやすいように曲げてあげている形になってしまいます。

２．横回転に限った事ではありませんが、回転量を増やすと、そこにエネルギーを使ってしまうため、ショットのスピードや他の方向の回転量は減る事になります。



メリットデメリットを総合的に判断すると

相手に近づいていく変化も返球しにくくする効果はありますが、横回転の量に加えて、球速もある程度ないと中々効果的なショットになりにくく、有効な場面は少なくなります。
それよりも相手から離れていく変化にして相手をより走らせるというのが主な使い道になります。

横回転をかけると相手に近づいていく変化をしてしまう時には、横回転を無くしても打てるようにする必要があります。

トップスピンや下回転のショットと比較して習得の優先順位は低いですが、使えるようになると有利になる場面もありますので、中級レベルくらいから徐々に横回転を使ったショットも覚えていきたいところです。