テニスの指導では、回内動作(プロネーションとも言います。)という言葉がよく出てきます。回内動作とは、体の内側方向に手首を回す動きの事です。
回内運動とは逆に体の外側方向に手首を回す動きは、回外動作(スピネーションとも言います)です。
回内運動、回外運動は、うちわをあおぐ時にも使う動きです。
当サイトの見解では、回外、回内の筋肉の使い方には、大きく分けて三つあり、ショットの種類によって使い分けられています。
1.回内、回外方向に腕が動かないように固定する:バックハンドスライス、ボレーなどでこの使い方をします。
2.意識的に回内、回外の筋肉を使う:サーブやフォアハンドストロークなどは、この使い方だと思われていますが、実はそれは間違っているというのが当サイトの見解で、意識的にこれらの筋肉を使うことはほぼありません。
3.回内、回外をリッラクスさせておく:サーブやフォアハンドストロークは、こちらの使い方になります。
1.回内、回外を固定
バックハンドスライス、ボレーなどでは回内、回外が起きないように固定する必要があります。
これらのショットで回内、回外を固定しないと、勝手に手首が動いてしまい、ラケット面が大きく動き、ショットが安定しなくなります。
2.意識的に回内、回外を使用
意識的に回内、回外の筋肉を使用するべき場面はほとんどありません。
一般的には、フォアハンドストローク、スマッシュでは、意識的に回内を使う必要があるとされていますが、そうすると、スムーズな運動連鎖ができなくなるので、やってはいけないというのが当サイトの考えです。
3.回内、回外をリラックスさせておく 「見かけ上の回内動作」
「1.回内、回外を固定」の所でも少し書きましたが、手を動かした時に回内、回外を固定しようとしないと、勝手に手首が回内、回外の方向に動いてしまいます。
これは手の位置によって、手の自然な回内、回外の角度というのが決まっているためです。
実際には、回内、回外の筋肉はリラックスさせていても、腕を振る事によって、回内、回外の筋力を意識的に使った時と同じように手の平の向きが回転します。
当サイトでは、この現象を「見かけ上の回内動作、回外動作」と呼んでいます。
フォアハンドストローク、スマッシュなどでは見かけ上の回内動作、片手バックハンドストローク、バックハンドスマッシュなどでは、見かけ上の回外動作を使っています。これにより、腕の振りから手首の回転へのスムーズで効率の良い運動連鎖が可能になります。
テニスの指導で使われる「回内運動」と解剖学で使われる「回内運動」
解剖学の観点から言えば回内運動は手首の動きではなく肘関節の動きになります。しかし、一般的には手首の動きと言われる事が多いですし、テニスのフォーム指導のうえでは、手首の動きとして考えた方が理解しやすいので、当サイトでも回内運動は「手首の動き」として取り扱っています。
また、テニスで回内運動と言う時は、解剖学でいう「回内運動」にプラスして、肩の「内旋運動」も含まれている事が多いです。正しいフォームを伝えるうえでは、わざわざ回内運動と内旋運動を分ける必要がないと考えているため、当サイトでもこのような用語の使い方をしております。
内旋運動とは、肩関節の運動で、肘が曲がった状態で肘を支点に前腕を内側に回転させる動きのこと。
肘を曲げた状態だと見た目にも全く違う運動になるのですが、肘を伸ばしてしまうと、回内運動と内旋運動の違いは非常に分かりにくくなります。そのため、内旋運動と回内運動を区別せず、解説される事が多いのです。
なお、回内するのに使う筋肉は、円回内筋、方形回内筋、回外するのに使う筋肉は、回外筋、上腕二頭筋という名前です。
今回の重要ポイント
〇体の内側方向へ手首を回す動きを回内動作(プロネーション)と言い、体の外側へ手首を回す動きを回外動作(スピネーション)と言う。
○回内、回外の筋肉の使い方は、1.固定、2.意識的に使う、3.リラックスの三種類ある。
○回内、回外をリラックスさせた状態で腕を振ると自然と、回内、回外を意識して使った時のように手の平の向きが変わる。これは「見かけ上の回内、回外動作」。
○スマッシュ、フォアハンドストロークなどでは見かけ上の回内動作を使う。
〇回内運動は、解剖学では肘関節の動きとされるが、手首の動きと考えても特に問題はない。
〇テニスで言う「回内運動」は、肩の「内旋運動」も含んでいる事が多い。