スプリットステップとは やり方・タイミング





今回の動画では、テニスで動き出しを速くするのに欠かせない「スプリットステップ」について解説していきます。「小さくジャンプする動き」という説明程度しかされない場合もありますが、それだけでは、不十分ですので、ここではやり方を細かく説明していきます。

基本的には、相手がボールを打つ際には、毎回スプリットステップを行う必要があります。


テニススクールなどでも最初の方に習う技術ですが、実は、上手くやるのは、意外に難しい技術になります。ご自身の動き出しが遅いと感じている方は、スプリットステップに問題がある可能性が高いので、ぜひこの動画を参考に動きを修正してみてください。


スプリットステップで速く動き出せるようになる理由としてよく挙げられているのが、「反動をつけられる」ためです。

人の体は、反動をつけることで、より大きな力を発揮できる事が知られており、
最初からヒザを曲げた状態からヒザを伸ばし始めるより、ヒザを素早く曲げてからヒザを伸ばし始めた方がより強く地面を蹴る事ができます。(反動をつけるとより力が発揮できる理由は、「伸張反射を使えるため」、また、「弾性エネルギーを蓄えられるため」だという考えが一般的です。)


しかし、スプリットステップにより速く動き出せる理由は反動以外にもあります。それについては、また後から解説していきますので、まずはやり方の説明していきます。



 






スプリットステップのやり方 (動き出し無し)

「スプリットステップのやり方 解説動画」




実際はスプットステップの途中で、行きたい方向に動き出す必要があるのですが、まずは、分かりやすいように、動き出しは無しで説明していきます。

スプリットステップ(小さくジャンプ)をする前の姿勢も重要になります。ポイントは3つあります。

1つ目は、足をやや内股にすることです。内股にしておくと、途中でヒザがそれ以上曲がらなくなる所がありますので、ヒザの曲げすぎを防ぐことができます。

2つ目は、上半身を大きく前傾させておくことです。

3つ目は、両足の間の幅をやや広めに取っておくことです。


この状態で足を開きながら小さくジャンプし、着地時には、両足の間の幅をかなり広く取るようにします。

スプリットステップの後の方が足幅が狭くなってしまうと、動き出し遅くなってしまうのでご注意ください。

着地時には、内股により止まる所までヒザが曲がるようにします。



上半身を大きく前傾させたり、足幅を大きく取るのは、普段することのない姿勢ですし、これらを行うと視界が大きく変わるため、
少しやっただけでも、大きくやった気になってしまやすいです。ですので、まずは、「できるだけ大きく」という意識を持ってみてください。初期段階では、そのような意識でも大きくなりすぎてしまう可能性はかなり低いです。


ただ、常に大きくしようと意識して練習を重ねていくとやりすぎてしまう可能性はあります。ですので、最終的には自分の動画を取って、体の前傾と足の開きの具合をトッププロと比較し、適切になるよう調整していくことをオススメします。



ジャンプ時に足を広げていくパターンが最もよく使われていますが、最初から足を大きく広げた状態でジャンプするパターンも使われます。ポイントをおさえられていれば、どちらを使ってもあまり違いは無いと思われます。



動き出しをスプリットステップのやり方

それでは、動き出しも含めたスプリットステップのやり方を解説していきます。テニスでは前後よりも左右に動く機会が多いため、今回は左右に素早く動きたい場合について説明します。


右にボールが来たとすると、動くべき方向が分かった時点で、体を右方向にターンさせ始め、左足で地面を左斜め下に蹴ります。ここで、先ほど述べた「足幅を広く取る」とい うことが、動き出しを速くするのに役に立ちます。    

右に速く動くためには、地面を左方向に強く蹴ることで、「作用反作用の法則」により、右に行くための力を地面から多くもらう必要があります。

作用反作用の法則とは、ある物体が他の物体に力を及ぼすとき、それとは逆向きで大きさの等しい力が常に働くという法則のことです。

下方向にいくら地面を蹴っても、もらえるのは、上方向にいくための力ですので、下方向への力を強くする必要は、ありません。

また、地面をより強く蹴れことができるのは、サイドステップで用いる、足の付け根から足全体を横に振るような動きではなく、
ヒザを伸ばして地面を蹴る動きです。


足幅を広く取り、左足を体から遠い位置に着地させると、ヒザを伸ばす動きで、左方向に地面を強く蹴ることができ、より速い動き出しができるようになります。逆に、左足が体に近い位置にある場合、地面を蹴る方向が下方向よりになってしまうため、速く動けなくなってしまいます。



次に右足の動きについて、説明していきます。

左足で地面を蹴っている間に「右足を左に引きつける動き」が起きるようにします。右足はそのままの位置では地面を左に強く蹴る事ができませんが、一度左の方に引きつけてから地面を蹴るようにすれば、それが可能になります。


この動きを起こせる事こそが、スプリットステップで速く動き出せる最も大きな理由だと言え、ベースライン付近でラリーをしている時、ネット前にいる時のどちらでも、速く動く場合は、この動きを使う事が必要になります。(遅く動いても問題ない場合であれば、この動きは使いません。)

逆にこれができていないようだと、スプリットステップの意味があまりなくなってしまいます。


この動きが起きるようにするためのポイントは2つあります。

1つ目のポイントは、体重が右足にあまり乗っていない状態で地面を蹴ろうとすることです。
地面に体重が多く乗ってしまっていると、地面との摩擦が大きく、スムーズに足を引きつけることができません。

体が空中に浮いている時間は、当然体重が地面に乗っていませんが、地面に足が着いていても、足首、ヒザ、股関節を固定させず
体を落下させていれば、その間は体重があまり乗らず、足を引きつけることができます。

何故、関節を固定しないと体重が乗らないのか、やや分かりにくいと思いますので、簡単な例を出して説明していきます。


体重60kgの人が2kgの荷物を持っていたとすると、合計62kg分の力で地面を押していることになります。しかし、荷物から手を放してしまえば、足が地面を押す力は、60kgになります。荷物が重力で落下しないように「支えている」から、その重さ分の力が地面にかかる訳で、支えるのを止めてしまえば、その分地面を押す力が弱くなるということです。

これと同じで、関節を固定しないで、体を支えず、体を落下させていれば、その間は、落下している分の体重は、地面にかからなくなります。逆に関節を完全に固定し、体が落下しないようにすると、地面に足が着いた瞬間から全体重がかかり、足を引きつけることができなくなってしまいます。


また、関節をリラックスさせておいても、途中でそれ以上曲がらなくなるポイントがあり、そこまで来ると体重が地面に完全に乗ってしまうことになりますので、それまでに足を引き寄せる必要があります。


なお、「絶対にカカトを地面に着けないように」と言われることがよくありますが、そういう意識を持つと、足首を固定することにつながってしまうので、そのような意識は持たないようにしてください。カカトが一瞬地面に着くことがあっても特に問題はありません。



「右足を引きつける動き」を起こすためのポイントの2つ目は、上半身を右方向に傾けている事です。ジャンプ前に前傾しておいて、体をターンさせると、それだけで右に体が傾いた状態ができます。

体を傾けておくことは、足を引きつけるのに必要なだけでなく、それ自体にもより強く左方向に地面を蹴ることを可能にし、動き出しを速くする効果があります。

陸上競技の短距離走の選手も、スタート後すぐに体を垂直に立ててしまうするのではなく、前傾状態を長めに取ることで、素早い加速を行っています。


2つのポイントを押さえられていれば、後は地面を強く蹴ろうとするだけで右足を引きつける動きが自然と起きるはずです。


なお、右足がどこまで引きつけられるかは、様々な要素によって変わってくると考えられます。毎回、決まった位置まで引きつけようとする必要はありません。


足を引きつける動きが出来ているかどうかは自分では分かりにくいので、動画を取って確認してみることをオススメします。



スプリットを行うタイミング

スプリットステップを始める(小さくジャンプする)タイミングは、大雑把に言えば、相手がボールを打つ瞬間の少し前になります。


タイミングが早すぎると、体重が完全に地面にかかり、足を寄せる動きが起きなくなってしまい、遅すぎると、地面を蹴り始めるまで に時間がかかってしまうので、どちらも動きだしが遅くなる原因となります。


ただ、練習していくうちに、適切なタイミングは自然と身についていくはずですので、速く動き出そうという意識さえ持つようにすれば、細かいタイミングについて深く考える必要はありません。



最後にプロ選手がサーブリターンの時にスプリットステップを行っている様子を紹介します。スローモーションになっていますが、それでもまだ速すぎると思いますので、0.25倍速に設定することをおススメします。(0・25倍速に設定する方法は「Youtubeの便利な機能」の記事で紹介しています。

「ラファエル・ナダル選手のスプリットステップ」(10:11:48~10:11:53)
オーストラリアオープン公式チャンネルより 2015年 ラファエル・ナダル 対 ドゥディ・セラ戦
*埋め込み設定により動画の開始時間と終了時間を設定し、動画の一部のみを見れるようにしているため、「もう一回見る」のボタンを押すと、設定した開始位置からではなく、最初から動画が始まってしまいます。設定した箇所を繰り返し見る時は、再生バーで開始時間をクリックする、パソコンの「←」ボタンを使って5秒巻き戻す、このページ自体を再読み込みするといった方法をご利用ください。






今回の重要ポイント

○スプリットステップを始める前の姿勢のポイントは「足をやや内股にすること」、「上半身を大きく前傾させること」、「両足の間の幅をやや広めに取ること」。

○足を開きながら小さくジャンプし、着地時には、両足の間の幅をかなり広く取る。

○まずは、上半身の前傾、足幅をできるだけ大きくする意識を持つ。

○右に動くとしたら、動くべき方向が分かった時点で、体を右方向にターンさせ始め、左足で地面を左斜め下に蹴る。

○足幅を広く取り、左足を体から遠い位置に着地させると右方向に強く地面を蹴れる。

○左足で地面を蹴っている間に「右足を左に引きつける動き」を起こす。そのためのポイントは、「体重が右足にあまり乗っていない状態で地面を蹴ろうとすること」、「上半身を右方向に傾けていること」。