「軸(上半身)を常に地面と垂直に保つ」は間違い




「上半身(軸とも言われます)を地面と垂直に保つように」とよく言われるのですが、これは明らかな間違いです。プロの試合を一度でも上半身の傾きに注目しながら見れば、このことはすぐに分かって頂けると思います。

ためしに、上半身に注目しながら次の動画をご覧ください。

オーストラリアンオープン公式チャンネル 2016年男子シングルス決勝 マレー対ジョコビッチ戦より

ボールを追う時も打球時も上半身が地面と垂直であることは、ほとんど無い事がお分かり頂けたでしょうか。

もちろん上半身が傾いているラリー映像を頑張って探した訳ではなく、このように体を傾けてラリーをするのが普通です。



 

 

上半身を地面と垂直に保ってはいけない理由

 

上半身を地面と垂直に保つことには、次の3つの大きな欠点があります。

動き出しが遅くなる:上半身が垂直では、素早く動き出すことができません。 動きたいのは横方向(地面と水平方向)なので、地面に水平の力を加える必要があり、そのためには、地面を下にではなく、斜めに強く蹴る必要があります。上半身が斜めに傾いていないとこれが上手くできません。陸上の短距離走でも「クラウチングスタート」という上半身を傾けたスタートの方が垂直に立ってスタートよりも速い事が知られていますね。


足を曲げるのが大変:地面と垂直のまま膝を曲げようとすると体の重心線(重心の横の位置)が体重を支える足の外に出てしまいます。そうするとバランスを保つため余計な筋力をを使うことになり、非常に疲れます。「疲れるのであまりヒザを曲げられない」という方は、筋力が足りないのが原因ではなく、上半身を傾けていないのが原因の可能性が高いです。


低いボールを取るのが大変:上半身を傾ければ自然と手の位置も下の方に行きます。上半身を地面と垂直のまま、肩と手首の角度を変えて打とうとするとまともにスイングできません。 ヒザを限界まで曲げると、上半身を傾けなくても、低い所がある程度取れますが、前述したとおり、上半身が地面と垂直では、ヒザを曲げるのが非常に大変ですので、それも厳しいです。


さらに、ほとんどどのショットでも上体を傾けて打つのが基本になります。フォアハンドストロークでは、上半身を右に傾けた状態から、徐々に垂直になりながら打つのが(足の力を使う打ち方の場合)基本ですし、バックハンドスライスでは、上半身を前傾させたまま打ちます。

上半身が地面と垂直に近い状態で打つ時も多少ありますが(主に高い打点で打つ時)、その頻度は少ないです。

 

おそらく、地面と垂直に保つと良いと考えが広まってしまった理由は、そうすることで、「ショットを打つ時、軸(上半身)の向きが変わらなくて済む」、「頭の位置が安定する」ので、ショットが安定すると思われているからでしょう。

しかしながら、当サイトでは、軸の向き、頭の位置が変わりながら打っても安定性は、ほとんど下がらないと考えています。問題は上半身がブレて予想できない動きをしてしまう事であり、毎回同じような動きができるなら、軸の向き、頭の位置が変化しても問題ありません。

 

上手い人ほど、上半身が地面と垂直を保っているというのは、完全に誤解であって、むしろテニス経験が浅い方ほど上半身を傾ける事ができず、ずっと地面と垂直に近い状態でプレーをしてしまっています。

上半身を傾きをうまく使う事でプラスの効果がたくさんありますので、ずっと垂直を保とうとするのでなく、適切に上半身を傾けられるようにしていく必要があります。



今回の重要ポイント

○「上半身を地面と垂直に保つように」というのは間違い

○上半身を地面と垂直に保とうとすると「動き出しが遅くなる」、「足を曲げるのが大変」、「低いボールを取るのが大変」というデメリットがある

○ほとんどどのショットでも上半身を傾けて打つのが基本