日本特有のテニス環境 遅くて跳ねないコートとボール




日本の標準的なテニス環境は世界標準とズレており、他国と比較してとてつもなく「遅くて、跳ねない」のが日本の一般的なテニス環境となっています。

その理由は、「遅くて跳ねない」コートで「遅くて跳ねない」ボールを使っているからです。

 

遅くて跳ねないコート 「オムニコート」

日本で最も多く使用されているのが、人工芝の上に砂をまいてだきている「オムニコート」です。しかし、オムニコートを使用している国は、日本、オーストラリア、ニュージーランドくらいで、海外では、ほとんど使用されていないコートになります。

オムニコートの特徴は、「遅くて跳ねない」事です。

クレーの方が弾まないのではないかと思われてる方も多いでしょうが、それは日本のクレーの場合です。全仏などで使われているのは「レッドクレー」と呼ばれる主に赤レンガを砕いたものでできたコートで、こちらは、スピードは遅いもののハードコートよりもバウンドが高くなります。

逆に、ウィンブルドンなどで使われる芝のコートは、バウンドが低くなるのが特徴ですが、スピードは、ハードコートよりも速くなります。

遅くて跳ねないというのは、オムニコートだけの特徴です。

 



遅くて跳ねないボール 「ダンロップフォート」

国内大会では最も使用されることが多いのがダンロップ フォート(2017年度) です。そのため、海外でも人気のボールだと思われがちですが、実は、フォートが使用されたATP、WTAツアーの大会は一つもありません(2017年度)。フォートは、完全に国内向けのボールなんです。

そして、フォートの特徴がオムニコートと同じく「遅くて跳ねない」ことです。

名前が完全に違うため、あまり知られていませんが、スリクソンも同じダンロップで作られたボールですが、スリクソンはATPツアーの楽天オープン、成都オープンなどで使用されています(2017年度)。

スリクソンは、フォートよりも「速く、跳ねる」ボールになります。

フォートは、1961年からありますが、スリクソンは、2007年から発売が開始しました。ダンロップのホームページにダンロップのボールの歴史を紹介したページがあり、そこには、「2007年国際大会に対応したスピードタイプボール スリクソン誕生」と書いてあります。

これは、逆を言えば、フォートは、「国際大会には対応できない遅すぎるボール」だという事を示しています。

ちなみに、The Dunlop Fort Clay Courtというボールは、レッドクレーで行われる国際大会で使われていますが、これは、日本では流通していないボールで、日本で使われているダンロップフォートとは別物になります。

 


ボールとコートのどちらか一つだけでも大きな違いなのに、どちらも「遅くて跳ねない」ものを使用する事が多いので、とてつもなく「遅くて跳ねない」のが日本の標準的なテニス環境になってしまっています。




 



遅くて跳ねないと何が変わるのか

プロの戦略を真似しようと思っても上手く行かないという時、単に自分のレベルの問題ではなく、日本の「遅くて跳ねない」環境が関わってきている可能性があります。

「遅くて跳ねない」環境だと試合にどういう影響があるのかをまとめましたので、参考にしてみてください。


ラリーが長くなる
中々ウィナーを取る事ができず、ラリーが長くなります。簡単にウィナーは取れないので、決めに行くには、通常の環境の時よりも、より甘いチャンスボールを待つ必要が出てきます。ラリーが長いと、ビッグサーバーの優位性が薄れます。また、体力がどれだけあるか、体力温存といった事の重要性が上がります。

跳ねすぎて打ちにくいことが減る
「遅くて跳ねない」環境だと、相手が打ちにくい感じるほど、速く上に跳ね上がるショットを打つ事が難しくなり、トップスピンの有効性が低くなります。トップスピンは、バウンド後の最高到達点が高くなるため、甘くなると相手が高い打点から打ち込むことが可能で、日本の環境だとチャンスボールになりやすいと言えます。スピンサーブや厚いグリップでのトップスピンを多くかけたストロークの有用性低くなります。

低すぎて打ちにくいことが増える
跳ねない環境では、ボールが低すぎて打ちにくくなりやすいです。そのためアンダースピン系、フラット系ののショットがより有効になります。ストロークでは薄めのグリップでトップスピン量を抑えめにした方が有効になりやすいです。

ポジションを前めに取る必要がある
相手のショットが速すぎて、後ろめに立たないと取れないという事が減り、逆にドロップなどの浅い球が取りにくくなるため、前めにポジションを取る必要があります。

ダブルスでは、平行陣が有利になる
最近では、ストロークが強くなってきているので、トッププロレベルでは、昔ほど平行陣が優位ではなくなってきていますが、「遅くて跳ねない」環境だと、平行陣の優位性が非常に高くなります。ボレーは高く弾まないため、ストローク側は中々攻め込めませんが、逆にストロークの方はスピードが遅いので前衛に取られやすくなるためです。



この「遅くて跳ねない」環境は、日本のテニス選手の国際的な活躍を妨げている要因だと考えられ、改善していくべきものだと思いますが、当分の間は、残念ながら変わっていきそうにありません。

日本の環境で試合に勝っていくためには、これらの事を考慮して、日本の環境に合った戦い方をしていく必要があります。


今回の重要ポイント

○オムニコート、ダンロップフォートはどちらも「遅くて跳ねない」のが特徴なので、とても「遅くて跳ねない」のが日本のテニス環境。

○「遅くて跳ねない」環境だと「ラリーが長くなる」、「跳ねすぎて打ちにくいという事が減り、トップスピン系のボールが弱くなる」、「低すぎて打ちにくいことが増え、フラット系、アンダースピン系のボールが強くなる」、「ポジションを前めに取る必要がある」、「ダブルスでは、平行陣が有利になる」といった影響が出る。

○遅くて跳ねない日本の環境に合った戦い方をしていく必要がある。