体重移動の力は(ほぼ)存在しない




「体重移動を利用するとショットのスピードが上がる」とよく言われる事があるのですが、実際には、体重移動に威力を上げる効果はほとんどなく、これはほぼ迷信であると言えます。今回の動画では、その理由について詳しく解説していきます。

「体重移動でショットの威力は上がるはほぼ迷信」解説動画

 

 

体重移動の意味 3種類

まず、「体重移動」がそもそも何を意味するのかなのですが、「体重移動」という言葉は、大きく分けると次の3種類の意味で使用されています。

1つめは、「後ろの足に乗っていた体重が前の足に移動する」という意味、2つめは、「体全体が前に動く」という意味、3つめは、「これら2つ以外」の意味です。


3つめの場合、「体重移動」は単なる比喩で、実際に体重を移動するという意味ではないということになります。

「体重移動」を文字通りとらえたら、1つめか2つめの意味になるはずですので、それ以外の意味で「体重移動」を使うのは、誤解を招いてしまうだけだと言えます。

また、3つめの意味では、具体的にどんな意味で「体重移動」という言葉を使っているかが全く分からないため、そもそもこの意味では、使うべきではないかと思います。

という事で、これについては、除外して考えます。




足から足への体重移動 

次に、「後ろの足に乗っていた体重が前の足に移動する」という意味での 体重移動について考えていきます。 


この意味での体重移動に実際に効果があるとしたら、後ろの足に全体重を乗せた状態から前の足に全体重を移し替えるのが、それを最大限使っていることになるはずです。

極端に言えば、このような動きでも最大限体重移動を行っていることになります。しかし、これで、ショットの威力は上げられるとは考えにくいです。

また、スキップステップやジャックナイフと呼ばれる打ち方などでは、前の足で跳んで、前の足で着地しますが、それでも速いショットを打つことができています。


科学的に見て、この意味での「体重移動」で威力を上げられるという根拠は、見当たらず、ショットの威力を上げる効果は、特に無いはずです。

 


 

体の前進による体重移動

最後に、「体全体が前に動く」という意味での体重移動について考えていきます。

結論から言えば、これ自体には、わずかにショットを速くする効果があります。しかし、無理に体の速度を上げようとすると、悪影響の方が大きいので、意識的に使おうとすべきではありません。


簡単な実験で、「体全体が前に動く」ことでどれだけショットに威力が出せるのかを見ていきます。

ヒジを体につけて固定させ、両手でラケットを体の前に構えた状態で走ることにより、体の前進のエネルギーのみでボールを打ってみます。このようにラケットを構える理由は、手首や腕などが動いて、体の前進以外のエネルギーを使ってしまうことが無いようにするためと、関節を固定して、より体重移動のエネルギーをしっかりと伝えられるようにするためです。


まず、止まった状態から一歩でなるべく速く前に動くようにしてボールを打ってみます。すると、ボールはほとんど飛びません。

今度は、助走を取って、ボールにぶつかっていきます。先ほどよりは、多少飛んでいますが、それでもあまり速いショットではありません。

手首の回転を使ってボールを打つと、手首をわずかに動かしてただけでも、ここまでボールが飛びます。

つまり、できるだけ体の前進のエネルギーを伝えられる体勢を取った上で、助走をつけてボールにぶつかたとしても、 手首をわずかに動かしたのにも劣る程度しかショットを速くする効果がないということです。



少ないとはいえ、効果があるなら、使おうとした方が良いのではないかと思われるかもしれませんが、体を前に速く動かすことによりショットの威力を上げようとするとデメリットが大きいため、使おうとすべきではありません。主なデメリットは次の4つです。

1.ボールとの距離やタイミングが合わせにくくなる
体を前に動かすという事は、当然、ボールとの距離を合わすことや、ボールを打つタイミングを計ることとも直接関係しています。
前進する速度を無理に上げようとするとこれらを犠牲にせざるを得なくなります。

2.エネルギーを無駄に消費する
ほとんどエネルギーを使わない、手首の動きの方が長い助走をつけてボールにぶつかっていくよりもスピードを出せるわけですから、
エネルギーの効率が非常に悪いと言えます。

3.相手からの返球への対応が遅くなる
速く動くほど止まりきるのに長い時間がかかってしまうため、次のボールへの対応に悪影響が出る可能性があります。

4.威力の面でもトータルで見るとマイナスになりやすい
たしかに体を前進させること自体には、ショットの威力を上げる効果が多少あります。しかし、体を速く前に動かすことに集中すると、威力を下げてしまう要因となることが起きやすくなります。

その要因とは、「ボールとの距離を合わせにくくなるためスイートスポット外してしまうこと」、「タイミングが合わせにくくなるため最もスイングスピードが出ている所で当てられないこと」、
「運動連鎖の効率が悪くなること」などです。


多少あるプラスの効果もこれらによるマイナスの効果に簡単に打ち消されてしまい、トータルで見れば威力の面でも結局マイナスになりやすいです。



ということで、この意味での体重移動も威力を上げる効果はほとんどなく、「体重移動で威力が上がる」というのは、(ほぼ)迷信であるという結論になります。